データサイエンス×舗装技術!新しい道路インフラマネジメントシステムの構築 ほか《東北大学研究TOPICS》
東北大学研究TOPICSでは、データサイエンス・AI・DX分野の最新研究TOPISをお届けします。
「インフラマネジメント”足すテナビリティ”共同研究部門」開設
データサイエンスと舗装技術による新しいインフラマネジメントシステムの構築
東北大学大学院工学研究科インフラ・マネジメント研究センター(以下、「インフラ・マネジメント研究センター」)とニチレキ株式会社(以下、「ニチレキ」)は、新しい道路インフラマネジメントシステムの構築を目的として、2023年4月1日に「インフラマネジメント”足すテナビリティ”共同研究部門」(以下、「本共同研究部門」)を東北大学大学院工学研究科に開設しました。
本共同研究部門では、道路を対象として、インフラ・マネジメント研究センターのデータサイエンスを中心とする情報処理のノウハウと、ニチレキの舗装材料開発や道路診断等の先端技術を活用した新しい道路インフラマネジメントシステムの構築を行います。さらに構築したシステムを道路管理者のインフラ維持管理業務に導入するための実証を行い、より実効性の高いシステムとなるようブラッシュアップを図ります。
スマートインフラマネジメントに対応したデータ活用と舗装の診断・措置技術により道路管理者(官公庁)の業務負担軽減と、利用者(市民)の安全性・利便性の向上が期待されます。
研究者情報
大学院工学研究科インフラ・マネジメント研究センター
教授 久田 真
生態系を利用した全く新しいAI ―高い生物多様性は高い計算能力に繋がる?―
近年、様々な分野でニューラルネットワークを用いたデータ解析法−いわゆる人工知能(AI)−が盛んに開発・利用されています。これまでに様々なニューラルネットワークが提案され、その計算能力が評価・利用されてきました。しかし、生態系に自然に存在するネットワーク(例えば、食う−食われるといった種間関係)が計算能力を持っているのか、またそれらを我々人間が利用できるのか、については全く研究されてきませんでした。
今回、京都大学白眉センター 潮雅之 特定准教授(研究当時、現:香港科技大学助理教授)、B.Creation (株) 渡邉一史 CEO、東北大学 福田康弘 助教、東京大学 徳留勇志 学術支援専門職員(研究当時)、中嶋浩平 准教授 のグループは、生態系シミュレーションと微生物培養系を用いた実験から、生態系に存在するネットワークが計算能力(情報処理能力)を持ち、我々がその能力を利用しうる、という証拠を見つけました。
本研究で示された「生態系の計算能力」は、これまでに注目されなかった計算資源であり、発展著しいAI技術に新たな方向性を与えるものです。また、高い生物多様性と高い計算能力に関連があることも示唆されており、これまで知られていなかった生物多様性の新たな価値に光を当てるものでもあります。
研究者情報
大学院農学研究科附複合生態フィールド研究教育センター
助教 福田 康弘
クラウドを活用した次世代型研究者データベースを構築 -AWS上のデータレイクでエビデンスベースの業績評価を効率化 –
現在、大学には国際的プレゼンス向上、若手研究者の登用、多様性と包摂性、産学連携推進など、様々な課題があります。これら課題解決の一助として、研究者の多様な業績を効率的に集積し、エビデンスベースで評価・分析するシステムの構築が求められています。
東北大学(総長:大野 英男)は、学外の論文情報データベースと、学内に蓄積された人事・研究費・教育実績等の多種多様なフォーマットのデータをアマゾン ウェブ サービス(以下、AWS)のクラウドサービスで構築したデータレイクに集約し、瞬時に評価・分析・可視化が可能なシステムを開発しました。これにより、論文被引用数等の画一的指標に限らず、共同研究、学生指導、管理運営の実績が自動的に集積され、より多面的でエビデンスベースな研究者の評価・分析が可能となりました。同時に、大学経営戦略のDX、研究者の研究時間確保への貢献も期待されます。
技術担当者情報
大学工学研究科 総長特別補佐(大学改革担当)
教授 高村 仁
匿名加工医療情報提供のお知らせ 新薬・治療法・AIシステムなどの研究開発を促進
東北大学病院は、次世代医療基盤法に基づいて、同院が保有する医療情報を利活用する取り組みを開始しました。同院は国による厳正な審査で認定された「認定匿名加工医療情報作成事業者」(認定事業者)と2022年1月31日に契約を締結し、2023年3月1日より、次世代医療基盤法に基づく患者さんへの通知を開始しました。通知を受け取った患者さんで停止を申し出た方以外の医療情報は、認定事業者により個人がわからないよう加工されたのち、医療ビッグデータとして大学や企業等の研究機関に提供され、新しい薬や治療法、医療AIシステムの開発などに役立てられます。本取り組みにより、医療情報を安全・安心に収集し、患者さん一人ひとりに最適な医療サービスの提供や病気の早期発見、より効果的な治療法や新薬の創出などを促進することが期待されます。
昨今、人工知能(AI)技術は、スマートフォンやウェアラブルデバイスの普及や進化も相まって目覚ましい発展を遂げ、私たちの生活のあらゆる場面で活用されています。医療分野での導入も増加しており、病気の予防や予知につながる新たな医療サービスの開発や、医療の質向上への寄与が期待されています。このような先端技術開発では、「医療ビッグデータ」と呼ばれる膨大な医療情報をAIに機械学習させることが重要です。医療施設では、病気やけがの診察・診断・検査・画像・治療などの幅広く膨大な医療情報を保有しており、東北大学病院だけでも年間1万8千人の医療情報が厳格な管理のもと新たに蓄積されています。日本全国の病院から医療情報が集積されれば、さらに膨大な「医療ビッグデータ」となります。例えば検査画像を解析することで、がんなどの病気の早期診断・早期治療・最も適した治療方法の選択など、医師の判断を支援するような最先端アプリケーションの開発に役立てることが可能となります。東北大学病院は、認定事業者である一般財団法人日本医師会医療情報管理機構(J-MIMO)と協業し、こうした制度協力に留まらず、安心安全で精緻な分析方法の確立や明日の医療のつながる研究を促進して参ります。
問い合わせ先
東北大学病院広報室
電話番号:022-717-7149
AI insideと東北大学吉田和哉研究室、月面・宇宙など極限環境で稼働する「高耐久・高性能・省エネルギーな次世代型AI」の共同研究を開始
AIインフラの提供を通じてAI民主化を推進するAI inside 株式会社(代表取締役社長CEO兼CPO:渡久地 択、本社:東京都渋谷区、以下「AI inside」)と、内閣府の「ムーンショット型研究開発プログラム」をはじめ数多くの宇宙開発プロジェクトに携わっている国立大学法人東北大学(所在地:宮城県仙台市、総長:大野 英男、以下「東北大学」)の吉田和哉研究室は、共同研究契約を締結し、「極限環境に求められる高耐久・高性能・省エネルギーな次世代型AI」の共同開発とその社会実装に取り組むことをお知らせします。
AI inside が有する研究段階を含む最先端AI要素技術および他社に先駆けてAI技術を社会実装してきた実績・知見と、吉田研究室が有する月面探査・宇宙開発の知見や宇宙ロボティクス分野における多数の技術シーズを生かすことで宇宙進出を加速させ、気候変動や人口爆発、食糧危機といった世界規模の社会課題の解決、ひいては人類社会の進化への貢献を目指します。
研究者情報
大学院工学研究科航空宇宙工学専攻
教授 吉田 和哉